新しい職業が日々生まれるこの時代で、未来の仕事をつくる人とは?「人と人とをつなげる」コミュニティデザイナー株式会社studio-L代表 山崎亮さんへのインタビュー記事第3回ではこれからの仕事の担い手について触れています。

山崎亮さん

山崎亮さんのプロフィール

株式会社studio-L代表/東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科教授/慶応義塾大学特別招聘教授

1973年愛知県生まれ。
「人と人とをつなげる」コミュニティデザイナーとして、地域の課題を地元の住民たちが解決するためのまちづくりワークショップや、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトに携わっている。
「海士町総合振興計画」や「マルヤガーデンズコミュニティデザイン」等、数多くのプロジェクトを手がける。
主な著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『まちの幸福論(NHK出版)』などがある。

インタビュー記事第1回の記事はこちら
インタビュー記事第2回の記事はこちら

'コラボレーション'
これでしか解決できない問題が今世の中にはいっぱいある

桐谷:大学でコミュニティデザイナーを育成する教育に関わっておられますが、本当に新しい職種ですよね。これから無くなっていく職種もあれば、プロブロガーという新しい職種もある。そういう意味でコミュニティデザイナーは新しい職種であり、未来を作っていく職種だと思うのですが、どういう人がコミュニティデザイナーになっていけるのでしょうか?

山崎亮さん

山崎:コミュニケーションは大事です。コミュニケーションのスキルというか、人と会話をしたり人の話を聞いたり、聞いた話を整理してまとめていったり、それからある種の責任感を発揮していったり、あるときはリーダーシップを発揮しないといけないし、またあるときはフォロワーシップもきちんと発揮しないといけないと思うのです。人々を惹き付けないといけないし、自身に責任感を植え付けていかないといけないし、そういう技術に長けていかないといけないはずなのですが、義務教育で今教えられているなかで重要とされているもの、いわゆる5教科はそんなに偏差値が高くなくてもいいと思うのです。そこで測れることで解決できる問題は、一通り解決されているのが今の世の中のような気がするのです。

農学部、工学部、理学部、経済学部という学部をつくり、その中に学科をいっぱい細かくつくって、各学科が深く勉強していく、その学部で育った人たちをその業界に入れていくために学部学科編成を通して分化させ、深いところまで学んで社会で問題になっていることを一つずつ解決していこうとしているわけですが、その個別細分化プラス深化、深くさせていくことで解決できる問題は20世紀のあいだにやってきたはずなんですよね。

それでも今問題が世の中にかなり残っていて、この問題はどう解決できるかっていうと、もう深堀していくのではなくて別の分野の人と別の分野の人がコラボレーションすることによってしか解決できない問題が今世の中にいっぱいあると思うのです。ある専門家とある専門家が一緒になって何かする、あるいは三者四者が一緒になってなにかするということが大事になってくる。

教鞭をとる山崎さん

写真提供:株式会社studio-L

別の分野同士をくっつけて、
一緒に歩んでいくことができる人
そんな人たちが未来の仕事の担い手となる

山崎:しかし、恊働やコラボレーションが大事だと長い間言われてきたのですが、専門家と専門家とが一緒にタッグを組んで問題解決をしたいと思えないと一緒にやらないですよね。コラボレーションのためのフレームワークを、制度をとなるのですが、この人おもしろい、ぜひ一緒にやりたい思えばコラボレーションは実現するのですが、人間なので、一緒にやりたくないと思ったら、両方いい専門家で、この2人がコンビを組めば絶対課題は解決できるはずであってもこの問題は解決できないことになってしまうんですよね。

そうなるとさっきのコミュニケーション能力であったり、統率力であったり人を惹き付ける能力や魅力とか、この部分がこれからは非常に大切になってきます。ここの能力を高めることをこれからやっていかないといけないし、新しいタイプの職業はどこから出てくるのかというと、今まだ解決できていないものを解決して、対価をもらうという仕事しかないと思います。別の分野同士をくっつけていくことができる人、あるいは住民でも住民同士をくっつけて一緒に何かやっていきましょうという人たち、こんな人たちが未来の仕事をつくっていくことになると思います。

ハワード・ガードナーという方が、人間には8つの能力があって、最終的には20に分けていたのですが、空間把握能力とか、スポーツの能力、リズム感や音楽の能力、こういう能力をみんな持っているのです。この中で記憶力と数的理解力(計算力)この2つの軸というのももちろんあります。
それ以外にコミュニケーション能力や信頼される能力、人からかわいがられる能力、これらも能力で、他にもいろんな能力があります。これら全て人間の能力なのに、記憶力と数的理解力、この2つだけの偏差値を上げて、テストではここしか測れない。もし他のタイプのテストができたら、実は日本で一番頭がいいといわれている大学に行ってる人たちも、それ以外の能力が低い可能性がある、ここしか突出していないということがあるかもしれない。

20世紀はこれでもよかったけれど、21世紀は誰かと一緒に何かをやろうという時代です。偏差値は少し下げてもいいから、他の部分の能力がある、こういう人を作っていかないと21世紀の課題は乗り越えにくいんじゃないかと思います。新しい仕事の担い手というのは、どこかだけ特化しているというのではなく、人間の能力のレーダーチャートがマルに近い状態であること。今コミュニティデザイン学科で教育している内容は、能力がまんべんなんく高められるような教育になっています。

談笑するふたり

新しい仕事が次々生まれるこの時代で
必要なものは偏差値の高さではない

桐谷:山崎さんが第一人者として、行政が苦手な人と人とをつなげるというコミュニティデザインをつくり上げられていて、これから山崎さんを追いかけていく人、山崎さんみたいになりたいという人がすごく多いと思うのですが、山崎さん自身はどういう背景からこういった人格になられたのでしょうか。
東京ではいまだに時間をお金で買うという発想があって、今までのビジネスもその考え方でやってきていると思うのですが、田舎はそうはいかないですよね。地域の中にも、誰を押さえたらコミュニティがうまくまわるか、とかあの家とあの家はあまり仲が良くないとか、誰が正しいとかではなく、田舎には東京とは違う大変さがあると思うのですが、例えばそこをどうやって鍛えて作り上げられたのかな、っていうのが気になりました。

山崎:あまり意識した事がないですね(笑)
ただ一つは、転校生だったというのが、今考えると大きな経験だったんじゃないかと思います。父親が4年に一回転勤する人だったので、地域というか、小学校のクラスのコミュニティの中に入って、人間関係もある程度できてきてクラスの中でもある程度の存在感を発揮できるようになったときに、来月引っ越すからと親から言われて、また次の小学校行く。

クラスの中に入っていくと今の人間関係がどうなっていて、誰がボスで、誰の仲間に入っていったらいいのか、今この子と友達になろうとしているけど、彼と友達になったら「彼と友達の俺」みたいになってしまうかなとか、そんなことばかり考えている小学生で、そんな自分がいやだなと小学校のときは自分のことが大嫌いでしたね。
でもその時に相当鍛えられたんだと思いますね。4年に一回全くまっさらなクラスというコミュニティに入って、このコミュニティは小学生からすれば太古の昔から友達に感じて、特に幼稚園から友達って言われたらもう勝てない。新参者の自分がどうやってこの中の位置を勝ち取っていくか、これは死活問題なので、それをやってきたというのは、この種の仕事をするにあたってはいい経験だったと思います。

しかし新しい仕事はやはり増えると思います。僕が小学校のときにはスマホアプリのプログラムをつくるという仕事は存在していなかったわけで、今の日本の小学生たちも彼らが大学はいって就職活動する頃には、今世の中にはない仕事に半数以上がつく可能性がありますよね。
そうなったときを見据えた教育というのは、コミュニティデザインという仕事も今までなかったタイプの仕事かもしれないけど、そういうのをつくり出したときに求める人材というのは偏差値が高い人ではないことは確かなので、自分たちがほしいなと思う人材をどう育てるのかと、コミュニティデザイン学科のカリキュラムを考えているときに、そうか僕らが大事だと思っていたことというのは、日本にとってはごく一時期に必要な能力で、その後の時代には違う能力の方が求められるんじゃないかと思いますね。

(次回へつづく)

※インタビューに掲載されている企業・団体様の活動と弊社は一切関わりがございません。

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