「人と人とをつなげる」コミュニティデザイナー 株式会社studio-L代表 山崎亮さんへのインタビュー記事第2回では、ライフスタイルや地域のあり方の変化についての話が展開されています。

山崎亮さん

山崎亮さんのプロフィール

株式会社studio-L代表/東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科教授/慶応義塾大学特別招聘教授

1973年愛知県生まれ。
「人と人とをつなげる」コミュニティデザイナーとして、地域の課題を地元の住民たちが解決するためのまちづくりワークショップや、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトに携わっている。
「海士町総合振興計画」や「マルヤガーデンズコミュニティデザイン」等、数多くのプロジェクトを手がける。
主な著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『まちの幸福論(NHK出版)』などがある。

インタビュー記事第1回の記事はこちらよりご覧ください。

人は繋がって協力して生きていかないといけない

桐谷:今本当に人のライフスタイルが変わり始めている気がしますね。

山崎:変わってきていると思います。それが将来地域にどういう影響を与えるのかというのは、もう少したつと如実に現れてくると思うのですが、一つの大きなファクターは2025年問題といわれている、団塊の世代の人たちが75歳以上になるという時期でしょう。病院の病床が足りなくなったり、地域でどういう風にその人たちと共生していくかということが求められるようになりますし、これは若い人たちにとっても大きな影響を与えることになると思います。
やはり団塊の世代の教育が必要な気がしますね。昔はよかったことも、今の時代においてはなかなか20歳、30歳離れた人たちには団塊パワーのようなものは伝わりづらいですから。
全く新しいタイプの地域におけるベテランになれるかどうかだと思います。

桐谷:そうですね、地域のあり方も変わってきますよね。
そのときにどうまとめるか、どうコミュニティをコンパクトシティ的に作り上げていくのかということは、非常に大きな課題だと思っています。

山崎:そうでしょうね。地縁型の旧来のやり方というのは成り立たないことは間違いないのですが、これは都市部では成り立ちませんが、農村部ではそうでもないでしょうね。

山崎亮さん

山崎:もう時代が変わったと言わざるを得ないんですが、過去、東京都の都心の自治会に加入している人は125世帯中、加入していないのは2世帯しかなかったという時代がありました。都心であっても、125世帯中123世帯が自治会にちゃんと加入していて、地域のことは自分たちで話し合って決めていくっていうのが出来上がっていたのですが、そんな状況は今の日本の農村に行ってももうほとんど見られないのです。
こういう時代になってきたとき、地域のコミュニティを、地縁型のコミュニティとしてだけとらえようとすると、加入していない人たちがほとんどで、都市部は6割くらいしか加入率がない。人は繋がって協力しながら生きていかないといけないし、社会的コストが大きくなってしまうことはだいだいわかってきたのですが、その繋がる単位というのが旧来とは違う。だとするとテーマ型コミュニティという、趣味が合う人同士がどうやって集まってくるのか、そしてこの人同士が生活をどう支え合っていくのか、それをテーマ型コミュニティ以外の他のコミュニティとどう繋がっていくのか、この辺がすごく大切になってくるだろうと思います。

増えていく空き家。
自分たちと志し同じくしてくれる人たちに
入ってきてもらえるコミュニティづくり。

桐谷:2025年問題もそうですが、今後空き家が増えていきますよね。今、空き家再生が一つのテーマとして、どこの自治体でも移住者を誘致していますが、それを本気でやっている自治体とそうではない自治体の差がものすごく大きいと感じています。
自分の移住地探しをした際、やはり海士町の話をする人が非常に多かったんです。土日もオープンしていて、就職のお世話もしているという、そのスタンス、本気度が自治体、地域、コミュニティを活性化すると思うのですが、正直今住んでいる南房総は中途半端な部分があって、その理由としては都心から1時間半くらいで行けるんですよね。中途半端な土地の値段があるので、まだ土地を売ったらなんとかなるという考え方があって、でもこれが2025年とかになったらそういう時代ではなくなるので、そうなったときに地域の中の格差がものすごく出てくるんじゃないかと感じています。

山崎:そうですね。地方創生って競争ですよね。今、この1年の間に総合戦略を出すという宿題が地方に出ていて、各自治体がそれぞれ戦略を出してくるでしょうけれど、それを実行する本気度合いが問われることになってくるだろうと思います。
空き家の問題は、法改正があったのでこれからは空き家認定の基準を考えることになると思います。これは多分最終的な判断は各基礎自治体に委ねられると思いますが、各基礎自治体が何をもって空き家とするか、国としては1年間一度も使用した形跡が無いということが最低限の空き家で、そこからは実際に運用するときの規則になると思うのですが、一年間使用した形跡がないことと、何を条件にして空き家認定にしていくか。
空き家認定された家屋については、中途半端に土地をいつか売ればいいやということでは無くて、早く売らないと税金ばかり取られるということになってくると思います。そうすると、売る金額が相当低いことに気づくと思うのです。こんな値段でしか売れないのかと。そのときハードの空き家が流動化することに合わせて、一体どんな人がそこに住んでどんなつながりを持つのかがとても大切になってくるでしょう。誰でも来てもらえればいいというわけではないと思いますし、コミュニティの中でも自分たちと志し同じくしてくれる人たちに入ってきてほしい気がしますよね。 人が全然いなくて困っているような土地でも、入っていきたいという人たちに対してはみんなで面接をするとか、この人たちだったら住めるという人たちと一緒に住んでいこうというようなコミュニティのつくり方が必要になってくるかもしれないですね。

山崎亮さん

写真提供:株式会社studio-L

何よりな大切なのは協力しようという周りのサポート

桐谷:山崎さんがこれまで多くの地方を見てきた中で、成功するコミュニティ、うまくいかないコミュニティがあったと思います。海士町は限界集落の限までいったから、本気になって成功したのかなと思うのですが、どういう地域が成功しやすい、というのは山崎さんの中でありますか?

山崎:ある程度限界のところまできている人たちの力は強いなというのは感じるところですね。
ただ海士町は、山内町長じゃなかったらあそこまでいっていたかという気がします。山内さんが町長になった時期が、町の借金が100億を超えている時期であり、山内さんが出馬するのがもう一期遅かったら、地域の再生はさらに遅れて借金は110億になったかもしれない。限界の時期というのがもちろん必要なのと、そこにリーダーシップを持った人がちゃんと立つという状況とが重なり合ったときでないとうまくまわらないんだろうと思いますね。
そういう地方ではよく足の引っぱり合いみたいなことをしてしまうのですが、やはり足を引っ張らない、協力しようという周りのサポート、これがかなり大切になってくると思います。

地域づくりはお金をもらうわけではない。
けれどここで培われた関係性は
将来かけがえのないものになっていく。

山崎:山内町長の場合ですと、もともと海士町出身で青年団を率いていて、人形劇で日本一をとろうと、一生懸命練習をしていた20代、30代がありました。仕事をきっかけに島根の本土に行って議員になって戻り、紆余曲折を経て町長になったとき、役場内を見渡してみるとそのとき課長級だった人たちがみんな昔人形劇をやっていた人たちだったんですね。町長になったからといって、必ずしも周りの人とうまくやれるわけではないのですが、海士町の場合は山内町長が戻ってこられて、かつて人形劇で仲間だった人がいっぱいいたので、先輩が言うことだったら一緒にやりますよというように、みんなで一緒に同じ方向を向けたというのがあると思います。
そういう意味から、コミュニティで活動していくことは結構大事だなと思いますよね。人形劇はお給料をもらってしていたわけではないし、仕事だったわけでもない、空いた時間に楽しいなと思える人たちが楽しいと思えることを真剣にやっていた。これが最終的には会社組織になって役場の組長と職員という関係になっても、やはりお金なしにやっていた時の関係性がかなり大きく影響しているんじゃないかなという気がします。
地域づくりはお金をもらうわけではないし、仕事とは別にやらなきゃいけないんだけれど、ここで培われた人間関係というのが将来きいてくる事ことになる。今後超高齢社会で助けたり助けられたりしなければいけない世の中になったときに、どの関係性がうまく機能するかといったら、働いている職場の関係性も大事なのですが、仕事以外の関係性の方が将来きいてくるんじゃないかという気がします。

第3回のインタビュー記事はこちら

※インタビューに掲載されている企業・団体様の活動と弊社は一切関わりがございません。

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