創業11年目を迎えた2009年、さらに「ぶっこみ」つづける面白法人カヤックの柳澤大輔氏に、カヤックの企業精神、ものづくり精神についてうかがった。

柳澤大輔さん

古都鎌倉から新感覚ネットサービスを次々にリリースする「面白法人カヤック」。創業11年目を迎えた2009年、さらに「ぶっこみ」つづける柳澤大輔氏に、カヤックの企業精神、ものづくり精神についてうかがった。

「メンバーがつくるカヤック、カヤックがつくるサービス。」

(聞き手/デジパ:桐谷、西山)

桐谷:年末にまた面白いことやってましたよね。ネットサービスを全部売却するという。

柳澤:今回は88個やりました。ブッコミイレブンのサービス売却セールはこれで2回目でしたけど、作ってるモノの質が上がってるのと、カヤックへの注目もあったようで、前回より売れてますね。

桐谷:昨年なんかはウェブ業界もガラッと変わったと感じていますが、こういう時流であるにもかかわらず次々にサービスをリリースするというカヤックさんのスタイルはずっと維持してこられてますよね。

インタビューの様子写真

柳澤:カヤックは「ゼロから1を生み出す」という社会的使命を担おうと思っています。

サービスを生み出し、ある程度まで育てたら、リリースしたり売却したりを繰り返しているので、受託案件であってもコーポレートサイトを制作するというよりは何か新しいネットサービスを作っているようなスタイルを続けてきました。

「それだけでやっていけるのか?」というところはありますが、模索して実験して問いかけてこれまで10年間やってこれたので、これを継続して20年、30年となってきたらビジネスモデルとしても成立するんだろうという仮説をもとにやってるところがあります。

桐谷:「ゼロから1を生み出す」という社会的使命ですか。

柳澤:ウチのサービスは、需要があるから作るっていうモデルではなく、こういうものを作りたい、作ってみたい、というところからスタートしてるんです。
個人にまず手を挙げさせて、本当に作りたいという思いのあるものにGoサインを出します。そこでは数字的な目標とかについては一切考えない。そのプロセスが、「ゼロから1を生み出す」方法にあっているんです。
マーケットをリサーチして、フィールドワークして、ここが使いづらいからこう作れば、というようなアプローチだと、さほど革新的なものは歴史的に見てもそう出てこない。ニーズは関係なく、ただ自分が作りたいと思うところから生まれてくるものが、「驚き」のものになる。
そういうやり方をしていると、当然なかなか当たらないんですけど、10か20にひとつくらいは、あるマーケットを捉えるようなものが出てきます。マーケットの規模はそれぞれ違いますけど。
特にインターネットはまだ使い方がハッキリしていない発展途上の世界ですから、思いついたらやってみるというスタイルがうまくいくのかなと考えています。

桐谷:最近はケータイサービスもリリースされているようですが、ケータイはひとつ、テーマとなっていますか?

柳澤:そうですね。ここが伸びてくれば、もう一皮むけていくんだろうなと考えています。
去年ケータイサービスの事業部「カヤックモバイル$」を作って、公式で3サービスリリースしました。今年さらにつっこんでいくんですけど、カヤックとしては今年が「ケータイ元年」になるんじゃないかなと思ってます。その部分で人材も補強していきます。

桐谷:ネットサービスでいえば、mixiをはじめそれなりに大きなものが出尽くした感があると思うんですが、mixiクラスの大きいものを狙っている、あるいはニッチマーケットを狙っていくという手法もあると思いますが、そこはどうお考えですか?

柳澤:もちろん、リリースしたサービスが最終的にmixiクラスの規模になるというのは、作った本人もそういうものを生み出したという面白さがあるので、狙ってます。
一方で、規模感が小さくてもどこにもない、ある一部の人たちにすごく褒められたり喜んでもらえるようなニッチなサービスをつくるっていうのもすごくやりがいを感じます。なので、どっちもですね。(笑)

西山:では、まだまだ大規模なサービスも生み出せると。

柳澤:たとえばイーモバイルとか無線とか、どこでもネットにつながるようになることで、どんなことができるか。またはPCにウェブカムが標準装備されたときにどういうサービスがあるか。そういうハード的な、あるいはインフラ的な切替のタイミングにどんな面白い爆発的なものが出るか。そういうふうに考えると、まだまだYouTubeクラスのものも可能性があると思っています。

桐谷:カヤックさんは11年目ですけど、社員数80名を超えてますよね、この体制でまだ同じスタンスでやりつづけられてるっていうのは、柳澤さんだからできてるのかなと感じるところもあるんですが、そのへんの秘訣ってどこにあるんでしょう?

柳澤:秘訣ですか?!(笑)
この間アメリカのGoogle本社に訪れて、あの有名な社員食堂で食事をする機会がありました。すごい優秀そうな社員の人がたくさんいて(笑)、「でもこの会社の考え方をつくったのはこの人達じゃないんだよな〜」って、僕ぼそっと言ったんです。多分の創業時の3、4人があのすごい会社Googleの考え方やルールを作ったのであって、そこにいた大勢の社員ではない。
カヤックの場合は、みんな自分が会社を作ってると思ってるんですよ。そこが違いなんだろうなと思っています。規模が大きくなったとしても、一人一人が「自分がカヤックを作ってる」と思えるような組織作りをすればいいんだろうな、と。
そのために、どういう仕組みや、どういう考え方や、どういうルールを設ければいいのかっていうのを、11年間自問自答してきたつもりです。

桐谷:起業家としてネットサービスを考えるというのではなくて、カヤックとして考えるということですか。

柳澤:一緒に、仲間としてどうやってこの会社やっていこうか、という感じですね。
だから今年の1月の合宿は、『不況で、カヤックが倒産するかも知れません。その時、どんな倒産の仕方ならカヤックらしいか考える』っていうのがテーマだったんですよ。
新卒の社員もいたので、「エエーー!」って顔してましたけどね。(笑)

一同:ははははは(笑)

柳澤:でもまぁ、そういうのを通して、考えてるわけですよね。(笑)

桐谷:ちなみに、一番面白かったのはなんだったんですか?

柳澤:(会社の)葬式をやりましょうとか、「社員売り出しセールス」とか、いろいろでてましたね(笑)
でも、解散するけれど、新しくこういうことしようって考える人が多かったです。なるべく迷惑をかけずに、新しくできることはなんだろう、と。前向きなメンバーが集まっています。(笑)
企業の価値とか、社会的責任って何かなって考えたときに、お金を稼げなくなったら価値を生み出してないので解散だと思うんですけど、解散は解散なりに、最後にどんなことをするかっていうことで何かしら新しい価値を出せると思っています。
解散したら社員はみんなどこか違う会社に行かなくてはいけないですが、その時に、最後とはいえ企業の価値を上げておけば、あの会社出身っていうことで自分の価値にもつながりますよね。
それを、みんなで考えよう。と。

桐谷:「カヤック出身です」。

柳澤:って言えば、「あぁ、最後にあんな散り方した会社ね」って、ひとつ面接でも話しが弾むじゃないですか。(笑)
雇用を守るのも社長の責任かもしれないですけど、次に就職しやすくするっていう、そっちの責任の果たし方もあるかなと。

西山:サイコロ給というユニークな制度を取り入れられてますが、ぶっちゃけ社員の方は給与についてどう考えてるのか、気になります。会社と社員の間で、評価面の信頼がなければ、会社を自分ごとのように考えるマインドを維持することは難しいように思いますが。

インタビューの様子写真

柳澤:基本給は360度評価を取り入れているので、その評価をもとに決まっています。サイコロはそれに対してプラスαされる給与です。減るわけではないし、サイコロを振る意味を共有しているので、継続できていると思います。
ただお金に対しての意識は、ウチの会社もがっちり言ってますよ。言ってなければいまのこの会社は成立しないですから。
数字的なプレッシャーは常にあります。そこで負けちゃうことは本末転倒で、楽しめなくなっちゃったら意味ないじゃん、ということだけはハッキリしています。稼がなくていいと思ってる人は一人もいないし、自分の給与が上がらなくていいと思ってる人も、一人もいないですよ。評価で一喜一憂するのも、一緒だと思うし。
ただ、どっちでもいいと思ってるところはあるのかもな。それよりも大事なことがあると思ってる、ということの違いがちょっとあるだけで。(笑)

西山:数字的なプレッシャーと同時に、つねに生み出すことのプレッシャーもあると思うのですが、チームの停滞を感じることはありませんか?

柳澤:「ゼロ・1」が好きなメンバーが集まっているので、リリースまで1年かかるような長期のプロジェクトとかだと、だんだん最後のほうは苦戦したりしていますね。
ただ、何かを生み出すというところのプレッシャーというのはないです。ブレストやると必ず面白いアイデアは出てくるっていうのはみんな信じて疑っていないし、枯渇するとは誰も思ってない。プログラマー30歳限界説とか、一切信じてないようなメンバーが集まってますよ。(笑)

桐谷:なるほど。柳澤さんの経営って、周りから見てても非常におもしろいです。過去の経営ロジックじゃないですよね。そういう経営スタイルの会社がうまくいくような時代になるんじゃないのかなぁと思ってるんです。
今、日本も世界も、100年に一度の金融危機と言われていて、大きな価値観の変わり目だと感じているのですが、変わりゆく価値観とか日本のこれからとか、お考えがあったら聞かせてください。

柳澤:どうなっていくかを予想することはしていなくて、どうあるといいかなということで言えば、これまでのようにマネーゲームに興じる人がいてもいいと思うんですよ。買ったり負けたり、それはそれで。ただその買った負けたで病んじゃうとか、元気がなくなるとか、人を傷つたりする人がそこに参加してるからおかしなことになるので。
その人その人が楽しめばいんじゃないかなと思いますけどね。そういう個性とか個々の価値観を大切にしていく社会になればいいなと思ってます。
そこに、インターネットやツールがどう関わっていくんだろうなっていう興味がやっぱりありますね。

桐谷:たとえばどういったものですか?

柳澤:我々の現場でいえば、たとえばいまウチの制作でフリーのプログラマーに外注するとしたら、ある程度信頼できる人でなければまず頼まないです、システムの部分ですから。
でもアメリカではフリーのプログラマーを何人も起用することが成立するツールが出てきています。何時何分にPCにログインして、この時間にどのくらいのコードを書いてっていう工数管理もしっかりチェックできてしまうようなオンラインの管理ツールです。
それを使うことで正当な評価もできて、いいものがつくれる。プログラマーはプログラマーで、そういうツールによって腕に覚えのある人は家にいても稼げちゃうっていう。
そういう仕組みを日本で使ってる人はまだ少ないでしょうけど、これから確実に増えてくるだろうと思ってます。そうして、働き方も随分変わって自由になっていけば、自然と価値観は多様化していきますよね。

桐谷:それでは最後に、2009年の抱負などあれば教えていただけますか?

柳澤:事業的には「ケータイ元年」ですね。スピリット的にはこれまでやってきたことと同じことをやるという感じです。ただ、時勢的に不況といわれてるので、こんな時だからこそできることをやろう!というのはあります。

桐谷 西山:今日はお忙しい中ありがとうございました。

※インタビューに掲載されている企業・団体様の活動と弊社は一切関わりがございません。

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