デジパでメインディレクターとして活躍する3人にインタビュー。
プライベートなことからディレクションをしていて大変なことや感じること、ディレクターを目指す方へのメッセージなどを聞いてみました

渡部 忠デジパ創業時のメンバーでパートナー第一号。デジパでディレクターとして数々の案件に携わりながら後進の育成にもあたる。その傍ら個人のデザイン事務所でも地域のための幅広い企画・デザインを展開中。

橋口 元憲創業時からデジパメンバーとして様々なプロジェクトでメインディレクターとして活躍。
個人では自宅兼ショップの葉山で多肉植物の販売などを行う「すこし高台ショップ」を運営するなど、地域の交流の場も生み出している。

吉澤 富美2010年にデジパメンバーに。全メンバーから強い信頼を受け、大規模なサイト制作のディレクターとして数々のプロジェクトマネジメントを行っている。サウジアラビアで幼少期を過ごすユニークな経歴の持ち主。フリーランス経験を経て帰国後、2016年デジパに入社。

(聞き手/デジパ:木下)

見よう見まねでスタートした
ディレクターという仕事

木下:最近デジパ以外で活動していることはありますか?

渡部:僕が一番多いかな(笑)4つの軸があって、まずベースとなる1つめは個人でお客様からご依頼を頂く「企画・デザイン」です。紙とかWEB、映像、製品開発や店舗改装などジャンルを問わずやっています。2つめは出版業。本に携わる取材・編集・販促など印刷以外を友人と3人でやっていて、最近は全国の書店での取引が可能になりました。3つめはニットデザイナーの妻と一緒にカシミヤブランドの企画・デザイン・生産を行っています。最後は、今回取材場所としても使っているレンタルスペース「CORNER」ですね。飲食店許可もあるので、カフェとしても使用の可能です。

木下:すごい、多岐に渡っていますね。他のお2人はどうですか?

橋口:最近は業務が忙しかったのでなかなか個人的なことはできていないですね。吉澤さんはよくカンファレンスとかに出ていましたよね。

吉澤:前はよく出ていたのですが、私も橋口さんと同様業務が忙しすぎて、個人的にライブ行ったくらいですね(笑)

木下:なるほど(笑)ではディレクターとしてWebプロジェクトに携わる中で大変なことや楽しいこと、感じることはありますか?

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橋口:僕はデジパ以外の制作会社でディレクターの仕事をしたことがないんです。だから誰かに教えられたわけでもなく、全部見よう見まねで自分なりの考えを作りながらやってきているので、一つ一つの方法が本当に正しいかどうか確信が持てない中で進めているところがあります。
でも最近はWeb業界が成熟してきて、ある程度の手法が確立してきましたよね。自分以外の指標が出来上がってきたので、逆にそれをお手本として、自分なりに咀嚼しながらやっている。そういう意味では仕事は悩まずにできるようにはなってきました。でもこれから先はどうなるのかわからないよね、最近引退後のことを考え始めている(笑)

一同:えっ!(笑)

橋口:僕は決して長くはないWebの歴史の中で、初期の何にもないところからここまで探り探りでやってきて、キャリア的にはそろそろ終盤を迎えているんです。でも吉澤さんやその下の世代にいる人たちはネットありきのところからスタートしているど真ん中にいる人たちなので、当然僕の考え方とは全然違う。今後はそういう人たちに頑張ってほしいなと思っています。

木下:ちなみにこの業界に入ったときと今を比べて変わったこと、逆に変わらないと思うことはありますか?

橋口:僕がこの仕事を始めたころは、正直来年ネットの仕事なんてあるかどうかわからないよねっていう時代だった。でも今はインターネットがないと世の中がまわらない時代だし、それが前提で今の若い人たちはものを考えていますよね。
僕たちは何もないところでやってきたけど、次世代の人たちは整備されたものが「ある」という感覚でネット業界に入ってきているので、そことのギャップを感じることはありますね。本当は僕らが地ならしをして受け入れてあげるような地盤を作ってあげなければならなかったなとは思うのですが。

木下:なるほど。そもそもの前提が違うということですね。

一番いい仕事は
"クライアントさんも制作サイドもハッピーになれるお仕事"

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橋口:ディレクターをやっていて感じることとしては、できないこともまだまだたくさんありますが、クライアントさんも制作サイドもみんなハッピーになれる仕事が一番良い仕事だと思うんです。クライアントさんの満足度だけ考えていても、制作側が疲弊してしまったり、不満を持ちつつ作ったものはやはり仕事としてハッピーではないので、作る側もお客様もハッピーになる仕事が理想だと思います。

吉澤:橋口さんも言っていましたが、クライアント側と制作側、お互いゴールは「いいものを作りたい」のはずなのにぶつかってしまったり、相手への不満が募る状態にお互いが陥るケースをよく見るんです。でも、目指すところは同じなのでうまく擦り合わせて作っていけたらいいなと思いながらやっています。もちろんどうしても伝わらないときもありますが、少しずつ関係性が改善したときは嬉しいですし、ああよかったって思います。

渡部:僕もディレクターは素人から始めていて、いろいろと学びながらやってきているんだけど、そこに僕なりの個性を出すとすれば、お客様のご要望の汲み取りとか、部署間で起きる摩擦とか、混乱してしまっているお客様のニーズを整理することが一番時間を要する部分ですが、そこを丁寧に取り組むようにしています。そこがしっかり丁寧に整理できれば、その後の実現に向かうだけになるので楽しいことの連続かもしれません。

ディレクションが得意ではないからこそ気付ける
制作サイドの目線

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吉澤:大変なことで言えば、これはインタビューには使えないかもしれないけど(使っちゃいました笑)、私はそもそもディレクション全般が苦手で・・・(笑)コーディングをしている方が楽しいし、注力できればいいなぁと思うことがあります。

橋口:わかるよ、楽しくはないよね(笑)

渡部:えー(笑)一番楽しいのはどこ?

橋口:個人案件だと最初から最後まで、作るところも含めて自分でやるので全てをコントロールできる。ここはこうしてっていうのを想定しながら設計するのは充実感があります。でもやっぱりデザインしたりコーディングしたり作っている過程が一番楽しいよね。そこからディレクションだけを切り離すと、ちょっとね(笑)

渡部:想定外だった。僕はそこが楽しいんですよね。トータルでやりたいというのはよくわかるけど。

橋口:どちらが楽しいかと聞かれたら作る方だけど、少なくともデジパではディレクターをやれる人、ディレクターに向いている人がディレクターをやってきている。だから良し悪しは別にして、あまり数が揃わなかったよね。いまだに僕やなべちゃん(渡部さん)という古い人間がメインとしてやっている状況は、良い面も悪い面もどちらもあると思うから改善していけるといいなとは思いますよね。

吉澤:でも苦手だからこそ、というのも多少はあるなと思います。自分は元々制作サイドの人間なので、制作サイドの目線がわかる。スケジュールがこれだと辛いだろうな、金額はこれではきついだろうなとか。クライアントさんと制作サイドの間に立つ立場として、双方の調整がうまくできなかった時はどちらにも申し訳ない気持ちで逆に苦しいときもあるけれど、ある程度伝えるべきことははっきり伝えて、どうしようもないところは協力して、理解してもらいながらやれているんですよね。

橋口:今の話に近いかもしれないけど、僕は最初からフリーランスとしてやってきているから、クライアントさんのところに直接行ってお仕事を取ってくるという、ものを作る以前の工程に絶対に係わらなければいけないんですよね。でもそれって突き詰めるとディレクションなんですよ。作る以前の工程がしっかりしていないと後でガタガタになるということを身を以ってわかっている。だからデザイナーでもコーダーでも、自分が作業している工程でここはこうしたほうがいいんじゃないかって思うことがたくさんあると思うんだけど、それを改革したいとかこうやって管理してコントロールした方がいいのではっていう発想を前に出せる人はディレクターに向いてると思うんです。逆に作る世界に没入していくタイプの人もいるけど、やはりデジパサイズのプロジェクトをまわしていくには、制作サイドのことを理解できた方がやりやすいんじゃないかなと思います。

これから挑戦してみたいことは?

木下:今後、やりたいことやってみたいこと、挑戦したいことはありますか?

渡部:今やっていることがまさにそれにあたりますね。

木下:その活動を今後どうしていきたいですか?

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渡部:多岐に渡ってやりたいわけではなくて、「育てる」というか10年を目指すだけという感じです。出版もアパレルもこの場所も、空間が一つあればこういうことができるんだっていうことがわかったんです。先日も妻が松本でイベントがあるからって出て行ったんだけど、4時間弱で「イベント始まってまーす」ってLINEが来て、なんか都内に打ち合わせ行くのとほとんど変わらないなって思ったんですよね。今は偶然この場所があったから葉山でやっているけれど、違うところで場所があるよって言われれば、出版もアパレルも作って送ることが基本の動きだから、いつでもその場を作れるっていう細胞を活性化させておきたいですね。

吉澤:私はやはり前提としてものを作ることが好きなんです。だから現場で手を動かすことをもう少しやっていきたいと思っています。個人的には絵を描くのも好きなので最近は水彩画を書いたり、簡単な小さい縫い物を作ったりもしています。これまでは分業が多くてデザイナーさんが別でいたのでWebとしてのデザインは全くやってこなかったけど、今のディレクターとの仕事のバランスを考えつつ、機会があったらデザインの仕事も受けてみたいと思っています。
というのも、私は新しいものが好きで技術的にも常に追いかけていたのですが、ここ2、3年くらいは技術的に大きな変化がないんですよね。Webのトレンドが大きく変わっているということもなくて、前ほどすごくおもいしろい新しいのがきた!って感覚がない。業界的にも落ち着いているので、そういう意味で私自身もここに対する興味が落ち着いている感じがあります。
いずれにせよ、自分はトレンドの中で新しいことではなくて、自分がいままでやってきたことの中で一番強いところを仕事にしてきました。デザインも昔はやっていたけれど、コーディングの方が得意だったので、コーディングをメインでやっていただけなんです。でもこれからはデザインの機会も増やしていけたらいいなと思います。

橋口:僕は引退後のことを考えるのが楽しくてしょうがないです(笑)
デジパに対しては残せるものは残していきたいと思っています。個人的には今お世話になっているシェアオフィスで様々な業種の、世代的に近い人たちが集まっているんですけど、葉山に根付いている人たち且つ世代も近いので、それぞれの持っているもの、培ってきたものを集めて何かやりたいよねっていう話は常に出ていて、それがようやく少しずつ動き出しています。形としてはどうなるかわからないけど、子供もできて横の繋がりもできて思ったのは地域のこどもたちのために何かできることをやっていきたい、小さいことでもいいので何かやりたいと思っているのでそれが楽しみですね。

ディレクターを目指す人へ

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木下:これからディレクターを目指す人に向けて何かメッセージをお願いします。

渡部:僕はディレクターを目指す人には3つの能力が必要だと思っています。まずいろんな人の意見とか考えを丁寧に聞き取るやさしさ。もう1つは、そのプロジェクトで最も良いと思える解を導き発言するつよさ。そして最後にその現場、制作チームを指揮して納品成果物を完成に向かわせるたくましさです。最初はそういった感覚は持っていても、技として打ち出すことができないからなかなか上手くいかないかもしれない。けれど、丁寧に何年も取り組んでいれば必ず身につくし、この3要素が身につけば後にやってくるフリーランスの時代に大きく影響するのでぜひ頑張って身につけてほしいと思います。

吉澤:ディレクションすると様々な人に係わると思うけど、それぞれの仕事を全部自分ができなくても、誰が何をできるのか知っていくような、そういう興味を持っていくのが大事かなと思います。
制作のことがまったく分からない状態でディレクターとしていきなりプロジェクトに入ったり、営業担当さんがディレクターを兼ねていることもあるけれど、そういう場合はお互いのことがよくわかっておらず、違う言語で喋っているので意志の疎通ができないことがあります。そして制作サイドが何をやっているかわからない、というのはやはりついていくのが苦しいんですよね。なのでディレクターも制作サイドのことを理解できるように、興味を持つのが大事かなと思います。
また、やはりコミュニケーション能力は大事ですよね。多様性を認めることや、必要なことはしっかりと伝える強さも必要だと思います。私はすごく苦手だったけど、こういうときは心を鬼にして言わないとだめだなって思うこともあります。最終的にプラスなのであれば伝えるべきだってことにも気がついてできるようになったので、しっかりと向き合って続けていけば身についていくのかなと思います。

橋口:デジパのディレクターとして、これまでの制作の経験とかから、自分はディレクターとしてこういうことをやりたい、こういう風に改革していきたいんだっていう気持ちがあるとこれから先の形、未来が見えるなと感じるので、ぜひそういう人に来てもらえたら嬉しいです。

木下:ありがとうございました!

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撮影場所はCORNER。葉山の閑静な住宅街に佇むおしゃれでゆったりとした空間でした。