海士町は2050年日本の縮図

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隠岐諸島にある人口2400人、高齢化率39%の海士町に、5年半で230人の若者がIターンしているという話を聞き、その現地を見に行ってきた
羽田空港発6:50の飛行機に乗り米子空港着が8:05、そこから七類港へ移動し9:30発のフェリーに乗る
約3時間を船に揺られ海士町のある菱浦港につくのが12時半、約6時間の旅である
時間だけを考えたら海外に行くようなものである
海士町は、小泉政権時代の地方交付税大幅カットにより財政破綻の危機に陥る
そこで、地元経営者に請われて新町長に就任した山内町長が行政改革、産業改革、移住政策を次から次へと打ち出す
まず、2005年に町長が50%、職員が16から30%の大幅給与カットを実施し役場の意識改革、住民の意識改革をスタートさせる
役場に企業の経営論理を持ちこみ移住者に来てもらうために、土曜、日曜日も相談窓口を開くなどきめ細やかなサービスを実施する
私も3年前に、移住地探しに南は沖縄から北は長野県まで捜し歩いた経験があるのだがどこの役所も週末は閉まっており、無理をして平日に相談に行っても俗にいう役所仕事で踏み込んで相談にのってもらったことはない
農地を探そうものなら部署のたらい回しを幾度も経験し、その後メールでフォローされた記憶も皆無だった
だが、どこの田舎の自冶体も毎年度の事業計画には移住者誘致を掲げている

町を活性化させるために「よそ者と若者とバカ者」が必要だと山内町長は訴えIターン誘致に町長が力を注ぐ
よそ者は、地元の人間が気づかない外の目を持ってる
若者は、若さというエネルギーを持っている
バカ者は、強い思い、破天荒な発想、熱烈な実行力を持っている
その3種類の人間を島に呼ぶことで改革が実現するという考えを持ち施策をつぎつぎと打ち出す
まず、外の目を持っているよそ者を募集する海士町商品開発研修制度を立ち上げる
そして島民が当たり前に食べてきたサザエを使った「さざえカレー」を商品化し年間3000万円の収入に繋げる商品開発研修生が生まれたり、東大を卒業しUターン者と共に島の伝統的な塩作りを復活させ、海士町ブランドの塩として「海士乃塩」を立ち上げ都内の高級ホテルに出荷する事業を立ち上げる若者が出てくる
また特殊な冷凍技術を使い岩がきの養殖にも成功する
「島をまるごとブランド化」というスローガンで打ち出した産業改革は4年で効果を生み始め財政が好転する

今回はIターンでやってきた若者にできるだけ会って、どんな人物が島にやって来てなぜわざわざ海士町を選んだのかを聞いてまわった

まず、移住者で「巡りの環㈱」を起業された阿部さんと延岡さんの会社を訪ねた
事業内容は、メディア事業(海士WEBデパート)・教育事業(海士から学ぶ研修事業)・地域づくり事業(地域イベントの運営)
阿部さんはトヨタ自動車から延岡さんは東京のITベンチャーからの転身である
彼らになぜ海士町にきたのですかという質問をした
海士町には50年前にあった日本の自然と高齢化率39%という50年後の日本の未来図、その二面を併せ持つ環境がある
その日本の縮図のような環境下で、自分達の仕事の成果が島に貢献しているというのが目に見えるという喜びがある
離島なのでどこからどこまでが自分たちの影響下にあるのか手に取るように見えるので土地に対する愛情が持ちやすい
大手企業に勤めているといい面もあるが、自分の成果が目に見えにくいしどこまでが企業人の顔でどこまでが本当の自分なのかわからなくなる時があるが、海士町にいると限りなく本当の自分でいれる
そんな答えが返ってきた
また、ソニーから転身し教委職員を務める岩本さんにも同じ質問をした
岩本さんは、町の教育委員会が2006年から実施している中学校の出前授業の第1回目の講師として招かれたことがきっかけで海士町にIターンしてきた
仕事は県立隠岐島前高校の魅力化プロジェクトと島の中学校で出前授業いうと都会の大学生や起業家を講師として招き生徒が交流を深めるコーディネートを務める
島の中で人づくりすることにより持続可能な地域づくりができるという役割を担うことができると感じたことと、町職員も議員も一般島民も新しい考えに興味を持ちチャレンジしようという風土が移住を決めたポイントだと答えられた

今回会ったIターンの若者たちはいわゆる高学歴で有名企業からの転身者が多く、どこの企業でも採用したがるような人材である
あるいは、20年前なら彼らは東京でベンチャー企業を立ち上げていたかもしれない
そんな彼らの選んだ地が離島で限界集落寸前の海士町なのだが、ここに日本の人材の流れが大きく変わって来ているのを感じさせられた
彼らから海士町を通じて日本の新しい雛形を作りたいという共通の意志のようなものを私は感じた
若者のカッコいいという価値観が変化してきているのだ

そして何より、彼らを惹きつけたのは新しいものにチャレンジしようという島の風土だ
優秀な人材を採用するために社長役である町長がビジョンを語り戦略を作る
そして採用した人材に徹底した権限委譲をして好きなことをやらせる
ここで海士町の場合、マネージャー役である地元の青年団出身で改革志向であった役場課長の存在も見逃せない

私も、移住先を南房総に決めた一番のポイントは人であった

今回の海士町視察を通して、地方から日本が変わっていくのであろうという実感をもった