ウェブマガジン「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さんに、インタビューを行いました。

兼松佳宏さん

兼松佳宏さんのプロフィール

1979年秋田生まれの勉強家 兼 コンテンツディレクター。趣味は勉強すること、対話すること、実践すること。ひっくるめて「これからの◯◯」を創造すること。

greenz.jp編集長。CSRコンサルティング会社でアートディレクターとして勤務後、2006年フリーランスとして独立し、ウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わる。2008年、株式会社ビオピオを仲間たちと設立、取締役就任。2010年、greenz.jp編集長に就任。現在は、NPO法人グリーンズの立ち上げ準備中。

「いよいよ、やっと世代をつなぐフェーズへ」

(聞き手/デジパ:桐谷、小林)

桐谷

私はいま46歳なのですが、私たちが20代の頃に「エコロジー」「環境問題」「反原発」などのムーブメントが出始めてきました。ただそれが、重たいんですよね(笑)、ちょっと苦しそうにやってるように映るというか。ところが、グリーンズさんは同じ問題に対して楽しそうにオシャレにやっているように映ります。

兼松

うれしいです。

小林

それは意識的にやられてるんだろうなと感じています。問題解決というと「そうならねばならない」というのがあって、その情報を発信していくのかと思いきやグリーンズさんにはまったく囚われたものがなく「こういうのもアリだよね」という感じで情報発信をされていますよね。それは楽しくてかっこいいことだと思います。継続できそうですし、近づいていきたくなりますよね。

兼松

ありがとうございます。いちいちニヤニヤしてしまいます。(笑)

インタビューの様子写真

「僕たちのゴールは『クリエイティブで持続可能でワクワクする未来をつくるムーヴメントを起こすこと』」

桐谷

グリーンズはメディアの域を超えてるなと思っているんですが、みなさんご自身はメディアと思ってやってらっしゃるのですか?

兼松

greenz.jpって何ですか?と聞かれたときは、「ウェブマガジンです。」とまずは答えています。実際に情報発信が僕たちの柱ですし、その方が分かりやすいので。

僕たちのゴールは「クリエイティブで持続可能でワクワクする未来をつくるムーヴメントを起こすこと」なんです。世界にはたくさんの課題がありますが、ひとりで向きあうのはなかなか大変。そこで共感してくれる仲間を見つけて、どんどん勝手に広がっていくようなムーブメントが社会変革のカギだと信じています。

ムーヴメントを起こすには、価値観の近い多くの人とつながる必要がある。その役割を果たすのがウェブマガジンで、読者同士がつながってコミュニティが出来上がっていく感じですね。その広がりも含めてメディアなんです。

僕たちが開催するイベントの申込みフォームで、「greenz.jpってどういうイメージ?」といつも聞いているのですが、「軽い」「オシャレ」といった回答の中に「自由だけど着実」というのがあって、とても嬉しかったんです。

ウェブマガジンではわかりやすさが大事なので、グリーンズのメンバー内で普段議論しているような深い内容はあまり表面には出していません。でも毎日グッドアイデアを紹介する背景にはすごく大事なメッセージを込めているつもりです。

小林

本気さが伝わってるんですね。

兼松

だといいなと思います。

僕らは、いろんな"本気"の人のメッセージを翻訳をしたいと思っています。素晴らしいことを言ってるのに専門用語の連続で分かりづらいとか、熱い気持ちがあるのにうまく言語化できていないとか、そんなときにもったいないなあと思います。コミュニケーションするには、それをかみくだいて伝わりやすくするヘルプがやっぱり必要なんですよね。

桐谷

現在元編集長はgreenz.jpには関わってらっしゃるんですか?

兼松

発行人という立場で土台をつくる部分に関わっています。いまgreenz.jpはライフステージがそれぞれ違うメンバーで構成しているのですが、各々のライフステージでgreenz.jp的なものが広がっていけばいいなと思っています。

例えば菜央くんは、今DIY生活とかエネルギー自給とかに取り組んでいるのですが、子どもが2人いるので放射能のことが僕よりもリアルなんですね。やっぱり、リアルに自分ごとだと感じられる人が発信することが、メディアの"温度"をつくっていくと思います。

「関わるメンバーがそれぞれの立場でgreenz.jpを自分のメディアだと思ってもらえたら嬉しいですね。」

桐谷

グリーンズさんを見ていると、普通の会社じゃない空気がぷんぷんするというか(笑)、どういうマネジメントをされてるのか、とても興味を持ったのですが。

兼松

少し前に会社の媒体資料を作り直したんですが、そこに「勝手に副編集長って書いたから!」って、彼に(隣に座って作業をする副編集長の小野裕之さんを指さして)。

一同

兼松

という感じで、副編集長は本人に確認せずに任命しました。もちろん、何となく「興味あるだろうなあ」と感づいていた上でのムチャぶりですが、こういうことはよくあります(笑)。関わるメンバーがそれぞれの立場でgreenz.jpを自分のメディアだと思ってもらえたら嬉しいですね。

桐谷

そういうメンバーは、どうやって集まってくるのか、興味あります。

兼松

立ち上げから5年も経ち、さまざまな方々に支えていただきました。みんなそれぞれの人生で大切にしたいことがあるし、おりおり卒業していく。人が入っては抜け、入っては抜け、その新陳代謝がgreenz.jpを次の場所へ連れてってくれているなあとしみじみ思います。誰一人欠けても今のgreenz.jpはない。

大事なのはライフステージの違う人達が多様にいることかなと。子育て真っ盛りだったり、結婚間近だったり、まわりが就職活動中だったり。いろんな人生があって、それぞれの大切なことがサイトに反映されていくんです。

まあ、ぶっちゃけ、いるメンバーでやるしかないんです(笑)。誰かが抜けてまた新しいメンバーを迎えたときにはこういうことができるかもしれない、その都度できることを考えていく、そんな感じです。ほんと生き物みたいなんですよね。

集まってくるメンバーはみんな新しい時代の到来を予感していて、現状になんとなく違和感をもっていて、もっとこうすればいいのにって積極的に声を上げる人たちです。それはデザインやソーシャルメディアに限らず、すべての分野においてです。

僕自身も成長の5年間なんですよ。自分しか記事を書けないと思っていたこともあったんですが、そんなこと無いんですよね、実際。勇気を出して、仲間のポテンシャルを信じて委ねてみる。今は僕が編集長をやっていますから、greenz.jpに関わることに魅力を持ってもらう状況をつくることに責任は持ちますが、ネタを集めたり記事を書いたり、というのは本当はまかせられるんですよね。

グリーンズというコミュニティをつくる上で大事にしていることは人と人が関わる温度です。グリーンズのビジョンをチューニングするには人と人のつながりが何より大事になってきていると思います。

「大事なのは先達に感謝しつつ、今の時代を今の世代がつくっていくこと。」

桐谷

先日、弊社は10周年パーティーをやったんですが、退社後したメンバーや現在のメンバーも交えてだったのですが、だいたい世代が20代前半~30代後半です。

私はデジパで3回目の起業なんですが、独立して影響力のある会社を創ろうぜってことで、ダイナミックなエネルギーの流れにのってそれをモチベーションにやってたんですが、退職後に独立したメンバーはNPO法人を立ち上げて環境問題に取り組んでいたりとか、農家に修行に出たメンバーもいたりして、社会問題を解決したいとかそこにエネルギーが流れているなって感じています。世代交代みたいなものを感じていて、なんだろうなこの差は、と。

兼松さんご自身がこの世界に関わってこられたルーツは、どういうところからきていると思われますか。

兼松

20世紀的な文明って、最初はピュアな思いがあったはずなんです。でもどんどん時代は変わっていくものなのにかつての成功体験ばかりに執着にして、今あるさまざまな社会課題に目をつぶって来たのかなと感じています。大事なのは先達に感謝しつつ、今の時代を今の世代がつくっていくことですよね。

1960年代以降の環境活動は、勝ち取るための「戦い」の歴史だったと思います。そういう歴史があったということは忘れてはいけない。でも戦った後って、勝ったとしても何も無さそうじゃないですか?既存の当たり前の中で「戦う」よりも、それを飛び越えて新しい当たり前を「つくる」方が時代の気分にあっているような気がします。その方がクリエイティブで前向きな力がどんどん広がっていくような気がするんです。

小林

そうですね。グリーンズさんの、おしゃれというか、クリエイティブな方向性が人をひきつけているのかなって思います。あたらしいムーブメントですね。

インタビューの様子写真

兼松

以前いとうせいこうさんがアースデイ東京のステージで「悪の衝動があるように、善の衝動もある」とラップしていたんですが、それはものすごくしっくりきます。「性善説ですね?」とシニカルに突っ込まれることもありますが、「『善に向くことができる』という可能性を信じないでどうするの?」って。そこは世代の差があるかもしれないです。

それから、リーダー像も変わってきているように思います。リーダーシップと同時にフォロワーシップも大事になってきている。宇宙飛行士にとっては、リーダーシップよりフォロワーシップのほうが大事だって言うそうですよ。それは、リーダーになるならないじゃなくて、誰かがリーダーをやるときは自分がよいフォロワーに徹する必要があるということ。状況によって役割が入れ替わるというフレキシブルな感じは、上の世代にはもしかするとあまり無いのかもしれない。

いつも引っ張っていなくたっていいと思うんですよ。例えばパソコンが得意な人がいれば教わればいいし、釣りとか得意な人がいれば教わればいいし、でも自分はこれを教えられるっていうのがあれば、お互いそれを交換すればいいわけで。できないことを補いあうこと、それで幸せを感じるというのが人間の本質だと思うんですよね。もっとできないことに素直になっていいと思うんです。

自分が気持ちいいと思えることに従いながら行動していたら、結果的に社会のためにもなっていた、そんなふうになったらいいなと思います。そうやって"自分"の枠が広がってゆく。

ただ、そろそろ世代論はどうでもいいかなと思うところもあります。3.11以降は特にそうですね。何が自分にとって大切なのか、どんな暮らしをつくっていきたいのか、みんな見つめはじめている。その共通の思いをもって、いよいよ世代をつなぐフェーズへきたのかもしれません。

桐谷

震災後、いっきにそれは加速しそうな気がしますよね。震災後にgreenz.jpに変化はありますか?

兼松

僕たち自身、何を大切にしてゆきたいか考えました。その個人の変化が結果的にgreenz.jpを変えていくと思っていて、結論から言うと非営利団体グリーンズを準備中です。よりたくさんの方々に参加してもらい、ファイナンス的にも支えてもらえるような、オープンなメディアにしてゆきたいと思っています。それはどこにいても、何が起こってもグリーンズを続けるための決意です。

僕自身が震災後に強く感じたのは、仕事のために東京に残らなきゃというのは、なにか不自由だな、ということです。東京で仕事をすることとトレードオフにしたくない。そのことをいま真剣に考えているところです。ワーク・ライフ・バランスっていう言葉がありますけど、僕は最初から違和感があって。ワークとライフは一緒じゃないの?と。まさに人生をかけて、次のグリーンズのビジョンを描いているところです。

桐谷

首都圏から遠くに移転されたとしても、PCとネット環境があれば、今やっている東京での仕事も継続できるという前提でしょうか?

兼松

そうですね。あとはもう少し地域に根づいた仕事をやってもいいかなと考えてます。

桐谷

greenz.jpも、これからの兼松さんも楽しみにしています。

今日はお忙しいところどうもありがとうございました。

兼松

こちらこそありがとうございました!

※インタビューに掲載されている企業・団体様の活動と弊社は一切関わりがございません。

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